「一つ屋根の下?」作:ネコこたつ、挿絵:A☆KIRAさん





これから話す話は、私こと諸星あたるが体験した、
『緊張による精神的・肉体的に極限状態へ追い込まれた時、人はどうなるか』
という、身の毛もよだつ話である…


「あ〜、しっかし、修学旅行ってのはこーも退屈なもんかね〜…」
「まぁ〜そうくさるな、あたる…それよか、夜の為にちゃんと
 アレは持ってきたんだろうな?」
「あぁ、アレだろ。『泡のたつジュース』心配すんなって。」
「よしよし。それでこそ学級委員。」

その日、友引高校2学年の面々は、修学旅行最終日を迎えていた。
京都の見物とはだいたいのお決まりコースであるが、
なんともつまらないものである。(中には熱心に見学する奴もいたが)
それより、たいていこういった集団外泊的な行事でのお楽しみといえば、夜の宴会であろう。
当然、あたるのような人物が学級委員を務める2-4では、
恒例の『泡の立つジュース』を教師に見つからずこっそり飲もうと、しっかり準備が整えられていた。

夕方、全ての見学先を回り終え、宿泊先のホテルにつくなり、
生活主任の温泉マークがお決まりの注意をした。

「え〜、ではこれから、食事の時間以外は、消灯時間まで自由
 行動とする。各自、部屋でゆっくりするもよし。土産を買いに行くも
 よし。…ただし!絶対に酒なんぞ持ち込むんじゃないぞ!
 それから、消灯後に他の部屋に行くのも禁止だ。いーな!それでは解散!」

生徒達はお決まりの文句を言いながら、それぞれ指定された部屋に
荷物を抱えてチェックインすることとなった。
やはり午前中の見学の疲れがあるのであろう。ひとまず休んだのち、
宴会を行うこととなった。

「ったく、石のように頭の硬いやつだに〜あいつは。」
「まったくだ!我々の秩序ある宴会を権力を使ってぶち壊そうとするものなど、
 独裁者以外のなにものでもない!自民民はこうした迫害を受けたとき、
 ただちに団結して断固これに反対せねばいけないのである!
 そもそも…(ぶつぶつ)」
「また始まったよ…メガネのやつ…」
「ほっとけ。それよりどこで飲もうか、酒。」

「…何?酒?」
と、相談していると、男子生徒にとっての疫病神、面堂がすかさず聞きつけた。
「あ!面堂、どーしてそこに!」
「ばかもん!諸星。解散後、各クラスの学級委員は集合と言ってただろう。
 貴様が来んかったせいで、僕が部屋割りの変更プリントもらってくる
 ハメになったんだぞ!」
「ニャハハハ。そりゃご苦労なこって。」
「それより、今。酒、と言ってたな…」
「おうそうだ。面堂。おまえも来るか?」
「笑止!影の生活指導部員のこの僕が、いやしくも持ち込み禁止になっている
 アルコールを見逃すと思っているのか?このことは即刻、先生にっ…」

と、その時、後ろからバックを持った女子達が数人やってきた。
「あ、ダーリン。宴会する場所、どこに決まったっちゃ?」
「もちろん!参加させていただきますとも。」(挿絵:A☆KIRAさん)
「おーラム。メガネのいる部屋に決まったぞ。みんなに伝えておいてくれ。」
「ラ、ラムさん!?…ラムさんも参加されるのですか?」
「そーだっちゃ。ウチ以外にもしのぶや
 竜之介、他にも数人行くっちゃよ。
 男女混合でワイワイした方が楽しいっちゃ。
 終太郎は参加しないのけ?」
「もちろん!参加させていただきますとも。」
「じゃ、また後でだっちゃー。バイバイ」

そう言うと、ラムは参加する女子達に宴会の
部屋を伝えるため、飛んでいった。
「…で?面堂?『先生』がどうしたって?」
「『先制』がどうかしたか?諸星」
最初の態度とはうってかわり、すっかり開き直って
いる面堂終太郎がそこにいた。

(お、おのれは!…まぁ、いいか。面堂がバックに
 いれば、いざという時、全部こいつせいにすりゃいーし…)

などと考えながら、先ほど面堂がもってきた部屋割りの変更プリントを見た。
「え〜っとなになに?…あれ、俺が変わってるな。コースケのやつと
 同じ部屋か。ふむふむ…」

と、その時、コースケが異常にぴくりと反応した。
「?…どーしたコースケ?」
「あ…、いや、なんでもない……」
「男子の変更はここだけだな。あとは女子の変更が大幅みたいだな。
 ま、俺達にゃカンケーないか」
「夜這いかけるつもりだったやつ、確認しとけよー」
「アホか!」
「ハハハハハ…」



1日目、2日目の大部屋と違い、最終日のその日の宿は、一部屋2人の豪華な部屋になっていた。
コースケと一緒に部屋に着くなり荷物を降ろすと、あたるはベットに横になった。

「あ〜〜!気持ちいい!ベットで寝るのなんざ久しぶりだなぁ〜」
「……なぁ、あたる…」
「ん?なんだー?コースケ」

じーっと部屋割り変更の図を眺めていたコースケが、突然切り出してきた。
「頼む!一生のお願いだ!消灯後、部屋変わってくれ!」
「いーよ。んで、俺は誰の部屋に行きゃいーんだ?面堂のとこだけはお断りだぜ。」

必死で頼んでるコースケを横目に、あたるは部屋にそなえつけられた小さな
冷蔵庫から、コーラを出した。

「実は俺、3ヶ月間からA子のやつとつきあっててさ〜。で…な?…わかるだろ?」
「おっ♪ってことは、俺はA子と同じ部屋のK子のとこってわけだな?(カシュッ!)」

にやけた顔になりつつ、あたるはコーラの栓を開けた。

「…いや、さっき部屋割りが変更になったから、違う人だ。だいたい、
 お前と一緒になるなんて今日知ったばっかだろ?知ってたらもっと前から
 頼んでるよ。もともと、K子も変更前に俺と同じ部屋だったやつと付き
 合ってるから、この計画が立てれたんだぜ」
「ふ〜ん…ま、そりゃそか。で、俺が行く部屋にいるのは誰なんだ?
 (ゴクッゴクッゴクッ…)」

クラスでもかなり人気のあるK子と同部屋になるのを逃したが、あたるは
気にせず聞いた。
あたるは飲んでいたコーラを一気に噴出した。(挿絵:A☆KIRAさん)

「…お前じゃなかったら、絶対向こうもOKしないよ………ラムちゃんだ。」

あたるは飲んでいたコーラを一気に噴出した。





-夕食後-

さっそく2-4の男女数人がメガネの部屋に集まり、通称『泡のたつジュース』持参で宴会を始めた。

「一番!面堂終太郎!クローゼットに入ります!(ガチャ)わ〜ん!暗いよ〜
 せまいよ〜こわいよ〜!」
「おー、いいぞ面堂!」
「面堂さん素敵ー!(?)」
「負けてられっか〜!2番、パーマ。歌を歌います。さらば〜友引よ〜旅出〜つ〜船〜は〜♪」
「ひっこめオンチ!」
「歌うの止めて、だまってろ!酒がまずくなる!」

すっかりヒートアップして、完璧に宴会場と化したメガネの部屋があった。
しかし、いつもはこういった時は必ず一番騒ぎまくって、ドサクサに紛れて
女子にちょっかい出すはずのあたるは、一人黙って『ジュース』を飲んでいた。

「どぉ〜したの〜あたるちゃん!?ほらほら!もっと騒いで騒いで!」
「…ん?あ、あぁ。」
すっかり泥酔しているメガネが、あたるにちょっかい出してきた。
「どーした諸星?らしくないぞ〜。影の生活指導部のこの僕が公認してるんだ。教師の心配はいらん!」
「キャー、面堂さん素敵ー!」
「はっはっは。いやいや、どーも。」

あたるは、部屋にチェックインしたあとのコースケとのやり取りを思い出して、頭がいっぱいだった。
(…なぁ、あたる〜。おまえももう、ラムちゃんと暮らしてずいぶんに
 なるんだろ〜?そろそろさ〜、一線越えちゃってもいーんじゃねーかぁ?
 別に何も変わりゃしね〜って。な、な!こんなチャンス滅多にねーって)


ちょ、ちょっと待てよ…確かに、いままでな〜んもなかった事自体おかしーよ
な……あ、いやしかし!……もしここで一線超えてしまったら、今後ガールハント
するときに電撃くらって…って今と変わらんか………

あーだこーだ考えていると、ラムと同じ部屋のA子が、あたるの側にきてつぶやいた。

「あたる君。事情はラムちゃんに話しといたわよ。この際だから、いっしょに
 一晩過ごしちゃいなさいよ〜。ね、悪い事言わないから。我慢は体に毒よ。」
「…え?……」

ふと円卓上の囲みの向こう側にいるラムを見ると、目があった。

ひ、一晩…修学旅行の夜を……ラムと……マジ?……(グビビッ!)

その瞬間、ラムは顔をカアッと赤くして、違う方を向いてしまった。

……あ、あんまり……嫌がってないな…(どっくん、どっくん)

普段から煩悩の塊である諸星あたるといえども、さすがにこの時ばかりは
他の女子にちょっかいを出す余裕もなく、終わることのない論争を頭の中で
繰り返していた(途中から酔ったメガネが横から話しかけてくるのを聞かされつつ)
そして喧騒の中、宴会は続いた。


「ぶつぶつ……(う〜ん……でもその後、結婚しろと迫られたら……ってこれも今と変わらんし……)」
「……それでな、俺はその時、店の親父に言ったんだ!『俺が頼んだのは、つゆだくで、ネギだくじゃない』って。
 そしたらあの親父、なんてったと思う?『じゃーもっかい注文しな、にーちゃん』だとよ!……」
「ふーん……(……待てよ、そもそも家でだっていつでも……無理か。
 親もいるしジャリテンもいるし……)」
「……だからなー!俺は言ってやったわけよ!『この店は第3次産業ってやつを
 どー考えてるんだ!?』ってな。……そしたりゃな〜…おい!聞いてるのかっ!
 あたりゅ!!!!」
「きーてるって!酒くさい息吹きかけんなっ!!!」

完全に酔っ払ってろれつの回らなくなったメガネを無視しつつ、
あたるは再び悩み始めた。

「……だいたいよ〜。接客業ってのは、お客につくしてなんぼのもんだろ。それがよ〜……」
「あぁ、そーだな……(……う〜む…ここはやはり、損得考えず《ヤる!》べきなのか…)」
「テケレッツノパ〜。ハッパフミフミ。」
「あぁ、そーだな……」
「貴様!!!!やっぱりきーとらんじゃないか!!!」
「同じ話を何回してると思ってるんだっ!!!(だ、大体!今の俺はそれどころじゃないのだ!)」」

そう!その時あたるは、108の煩悩をフルに活用し、今晩のことのみ!考えていた。

「もろぼしぃ〜もろぼしぃ〜……たたっきってやる〜〜」
「わー!ばか!やめろ面堂!」

完全に酔っ払ったメガネと面堂に、倫理・常識というものはすでに通用しないらしい。
消灯時間が近づいてることもあり、女子は風呂に入るため席を離れることになった。

「あ、もうこんな時間じゃない。私達はこの辺で失礼するわね。お風呂入らなきゃ。」
「あ、しのぶ達もー帰っちゃうの?」
「あたる君、酔っ払った面堂さん達、よろしくね。じゃ。」
「あ、ちょっと〜……」

ふと、よく見回して見ると、男子でまともな状態なのは、あたるだけであった。

「メガネぇ〜〜!お前ってやつは!お前ってやつはーー!」
「響子さぁぁぁん!好きじゃぁぁぁ!!!」
「面堂〜〜!たたっきってやる〜〜!」
「風の……傷ーー!!!!!」
「私たち、島にかえりま〜〜す!」
「特大ステーキ!!!」
「男は…男は金だーー!」
「蒙虎落地勢!蒙虎落地勢!蒙虎落地勢!」
「おすわりぃぃぃ!!!!」
「忘れるもんかぁーーー!!!!」

…………。

ぞろぞろと出て行く女子達の最後にいたラムが、出て行く間際こうつぶやいた。
「…ダーリンも……早く寝るっちゃよ…」


「どーした諸星?いきなり鼻血だしたりして?」
「(どくどく鼻血流しつつ)……い、いや、ちょっと疲れてて……」
「悪かったな!さっさと風呂入って寝ろ!ったく。」




-風呂場-

ザバ〜……カコーン……ざぶっ……

ヤバい……ヤバすぎる。俺という男がそういつまでも理性を保っていられるわけがない!……
……それに………ラムって……案外かわいいとこもあるよな(ぼそっ)……(どよよ〜〜ん)

この時のあたるの頭を説明すると、ちょうど天秤の両皿に「欲望」と
「理性」をかけてる状態であったということは言うまでもない。


(10分後)
そんなに甘い男やないで俺はーっ!(挿絵:A☆KIRAさん)
なんか前にもこんなことあったような…
結局、一線を越えたところで大して変化はないんだよなぁ……





・・・俺はヤる!!ヤらいでかああッ!!
たとえこの小説が発禁になっても、俺はヤる!
そんなに甘い男やないで俺はーっ!!(ぐおおッッ!)


……………し、しかし、もしこれが
何かの罠だったら…
…いいのか、俺?こんな初体験で?(くらっ)
…いや!!!しかし!!!(ぐおおッッ!)
…………だが…しかし…(くらっ)


(30分後)
「おい、諸星。もー上がれ!うだってるじゃないか。」
「あぁ…まわる……、世界がまわる……(くら〜くら〜)」


仕方ないので、風呂から上がることにし、部屋に向かうことにした。
(教師にはもちろん、他の生徒にも見つからないようにこそこそと)

ラムの止まっている部屋の前に近づくと、すぅっと深呼吸し、ノックをした。



「(コン!コン!)…・・ラム?・・・」
「……ダーリンだっちゃ?(がちゃ)……ま、とりあえず入るっちゃ…」
「そ、そだな・・・ハハハ・・・」

よろよろと入り、冷たいものでも飲んで落ち着くことにした。

「ダーリン何にするっちゃ?」
「あー…コーラでいい……」

なまじこういった時間が神経を疲れさせるものである。
あたるの緊張はすでに限界へと達していた。



『夜景がきれいだ…でも、君の瞳はさらに美しく輝いているよ、ラム…』

『そんな映画の引用じゃなく、ダーリンの言葉で口説いて欲しいっちゃ…』

『そんじゃーー単刀直入にごっつぁんでーーーす!!!(ガバーー!!!)』



「ダーリン?どーしたっちゃ?」
「…っは!あ、いや、違う!違うぞー!今のは本心じゃなくってー!そのっ!(わーわー!)」
「?…おかしなダーリン!(くすくす)」

も、もう限界だ…体力的にはともかく、
このままでは精神的にまでヤれんとこまで消耗してしまう(は〜は〜うずうず)
でもどっちかってーとヤりてーーー!!!(泣笑)


「ねぇ、ダーリン。さっき部屋でこんな物見つけたんだけど…」
「…ん?オセロ?…」
「ヒマだから寝る前に一回やるっちゃ!」
「え〜、やだ。断る。オセロはつまらんからな。」
「そんなこと言わずに〜、…ね、一回だけだっちゃ!」
「一回だけだぞ……(今それどころじゃね〜ってのに。わかってんのかねコイツ…)」


(20分後)
「ふっふっふ。ど〜だラム。あきらめて観念せい。」
「何言ってるっちゃ。まだ勝負は終わってな…あ、ここだっちゃ!(パチッ)」

ぱたぱたぱたぱた……

「あーーーー!!!!」
「わ〜い!うちの勝ちだっちゃ!」
「くそーー!!!もう一回だ!」


(さらに20分後)
「ぐぬぬぬぬ……!!!」
「諦めるっちゃ。もうダーリンの負けだっちゃよ……」
「く、くそ!もう一回だ!もう一回!次は端っこは取らせん!」


<さらに(以下略)>
「・・・だ、だめだ・・・負けた・・・」
「ふあぁ〜……、もうこれで5回目だっちゃよ〜……」
「い、今のは端っこ取れないようお前が妨害したのが悪いんじゃないか!卑怯だぞ!!!」
「…当たり前の戦術だっちゃよ…」
「・・・ありゃ?寝て・・・るのか・・・」(挿絵:A☆KIRAさん)
「と、とにかく!もう一回!」

と、その時、ラムの体が急にあたるの体に寄りかかってきた。
「ら!ラム!お、おい!いきなり!?///ちょっと待………?」


慌てて見ると、静かな寝息をたててラムは眠っていた。

「…ありゃ?寝て…るのか…そういやもうこんな時間か。
今日は見学で一日中飛び回ってたわけだし、疲れるわな…」


ふと、ラムの様子を見てみると、いつもは
UFOで寝たり、押入れの中で寝ていることが
多くて、寝顔を見る機会が余りないためか、
なんだか新鮮に感じる。


「…アホらし。俺もさっさと寝よう…」

そう自分に言い聞かせると、ラムをベットに寝せ、自分ももう一つのベットにもぐりこんだ。

(ちくしょ〜〜……もったいね〜…シクシクシク…)

それは声にならない心の叫びであったということは言うまでもない・・・






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