その日は珍しいお客が友引大学・購買部、つまりは竜之介の所へ訪ねに来た。 「ごめんくださーい。」 「ごめんくださあい、だっちゃ。」 そう。清純派女優(?)のしのぶと雪の女王(?)ラムだ。 東海林が留学してから竜之介の所にはひとっこひとり客が来なかった為(購買部への 客は言うまでもなく別)、その2人の声の主が分かっていながら、ついつい何時もの 様に威勢良く言ってしまった。 「へい、らっしゃい!」 「・・・にしても久しぶりだよなあ〜。」 と、2人を部屋の中へ案内し、客専用の特上座布団(?)に座らせると竜之介は言っ た。(ちなみに渚は浜の相撲大会の為、運良く(?)同席していなかった。) 「そうよね、みんな別々の大学に行ってるからそう簡単に会えないし。ラムとあたる くんとコースケくんだけよね、同じ大学に通ってるの。それにしてもこうして会う のって何年ぶりかしら?卒業式の日から一度も会って無いわよね。」 「まだ一年も経ってないっちゃ。」 「え!?そうだったか?」 すっかり卒業して一年以上経っていると思っていた竜之介は必要以上に驚いた。ま あ、仕方ないだろう。竜之介は大学生ではない為、毎日をそう変わらずに過ごしてい るのだ。時間の感覚があまり無くても、そうはおかしくないと言えよう。 「だっちゃ。明後日で友引高校卒業一周年記念になるっちゃ。」 「あら、まだ一年経ってなかったの?あたし、てっきりもう・・・・。」 と、大学に通ってるにもかかわらず、らしくない発言をするしのぶ。普通、大学と限 らず学年の有る所に通っていると嫌でも卒業して何年目かは分かるはずだろうに・・ ・。 「何言ってるっちゃ、しのぶ。明後日一周年記念だから例の催しが行われるのに。」 「あ〜、そっか!だから明後日の日曜日なのね。」 何の事だかはっきりしないが、とにかく何かに納得した様子のしのぶ。 「だっちゃ。」 「あたし、てっきりもう一周年過ぎちゃったから慌てて例の事やろうって事になった と思ってたのよ。ほら、普通そういう事ってもう少し前に知らせるものじゃない?」 「幹事が通知するのをすっかり忘れてたっちゃ。本当は1ヶ月前には決まってたの に。」 「まあ!それで、その幹事って誰なの?」 少し間を置いて、 「・・・ダーリンだっちゃ。」 と、ラムがため息まじりに呟いた。 「・・・・・・あたるくん・・・ね。」 肩をすくめるしのぶ。 「うちが側にいながら申し訳無いっちゃ。みんなはみんなのスケジュールが有るって いうのに、こんなに急にしちゃって・・・・・。」 「ラムが謝る事無いわよ、あたるくんがドジやったんだから。それより、あたるくん にしては良い会場を選んだわよね。」 「そりゃそうだっちゃ!終太郎のとうちゃんが経営してるホテルなんだから!!」 「・・・・そうなのよね。それがどうも疑問なのよ。何であたるくんがよりによって 面堂くんちのホテルを会場にしたのかって・・・・。」 「簡単だっちゃ!終太郎んちのホテルにすれば会場代が節約できて、その分食べ物と か他の物が豪華になるっちゃ。」 もっとも、である。 「なるほどね・・・・・。」 「でも、その浮いた資金が全てその催しに使われるかどうかは・・・正直わからな いっちゃ。」 「そうよね・・・あたるくんだものね・・・・。」 と、2人は竜之介の存在を多少(?)忘れ、深刻気味に話していた。 「あっ、ごめんちゃ〜。竜之介の事すっかり忘れてたっちゃ。」 やっとこさっとこ竜之介の存在を思い出したラム。続いてしのぶが、 「あっ、そう言えば!ごめんね、竜之介くん。」 と、申し訳無さそうにひとこと。 「いや、別にかまわねえ〜けどその話って何なんだ?例の催しがど〜とか、会場がど 〜とか。」 あぐらを組み直し訪ねる竜之介。ちなみに、竜之介はラムとしのぶが使っている特上 座布団ではなく普通の安い座布団を敷いていた。 「ええ。実はね、明後日の日曜日に友引高校卒業一周年記念の同窓会が面堂くんち経 営のMホテルで催されるのよ。」 「それで、その報告をしにうちらは来たって事だっちゃ。竜之介、来れるけ?」 と、さっさと説明して返答を待つラムとしのぶ。 「は?そりゃ〜すげぇ、いきなりな話だな。まあ、日曜日と言わず何時でも暇だから 良いけどよお。」 と、悲しい事を言う竜之介。竜之介の頭には『浜茶屋のアルバイト』というのは忙し い内に入っていない様である。朝起きたら顔を洗うのと同じ様に浜茶屋のアルバイト は『当たり前の行動』と化しているらしい。むしろ、浜茶屋のおやじの相手の方が忙 しいのだろう。ご苦労である。 「まあ、気が向いたら行くようにするぜ。で、何時からだ?」 「3時からだっちゃ。」 と、指を3本たてながらラムが答える。 「3時だな。分かった。じゃ、行くかわかんねえ〜けど会えたら向こうで会お・・ ・」 会おうぜ。と、竜之介が言い切る前にしのぶが口をはさんだ。 「だめよ!行くかわかんねえ〜じゃ!!来てくれないと困るのよ!!」 「どういう意味だ?来てくれねえ〜と困るって?」 「だっちゃ。」 竜之介とラムはいったん足を崩し、正座に組み直してからしのぶに訊問(?)した。 「え?いや、別にそんな深い意味で言った訳じゃないのよ・・・ただ・・・」 「ただ?」 「ただ、何だっちゃ?」 「ただね、ほら、幹事があたるくんでしょ?って言う事は、あたるくんが進行のプロ グラムを作った訳じゃない?それで・・・・・」 「それで?」 「それで、何だっちゃ?」 「その・・・だから、あたるくんには悪いんだけど、ろくなプログラムじゃないん じゃ無いかって思うのよ。ほら、ミス友引コンテストの時もあんなだったじゃない? あたるくんに運営委員長を任せたら。」(『ミス友引コンテスト;予備選〜結果発 表』参照!) さすがはしのぶ。伊達にあたるの幼なじみをやっている訳ではなかったようだ。あた るの考え・行動・全てが手に取るように分かってしまうとは・・・。 「・・・・・・なるほどな。で?」 「よく覚えてたっちゃねえ〜、しのぶ。それで?」 「って事は乱闘・・・・まではいかないとしても、何か大騒ぎになるんじゃないか なって気持ちがして・・。そうなると、それを止められる人が必要になる訳じゃな い?」 「そうだな。」 「だっちゃね。」 「ほら、一応あたしも行くけど、あたしだけの力じゃ騒ぎなんて止められないと思う のよ。か弱い乙女の細腕だし・・・。」 しのぶの腕がか弱くって細いのかは別として、確かに諸星が作ったプログラムなら何 かしら欠点・問題点が有るだろう、と思った竜之介。っと、それ以前に何故、諸星が 幹事というご立派(?)大層なもんをやる事になったんだ?と思った。まあ、それは今 どうでも良いので話しは戻ろう。 竜之介はラムの方へ眼を向けた。 「ラムがいるじゃねえか。」 「うちもか弱い乙女だっちゃ。」 即答だった。 この2人、まるで自分の事を分かっちゃいないっ!と、竜之介が心の奥底で叫んだの はご承知だろう。 「んで、おれに来てもらいてえって訳なんだな?」 眼をしのぶの方へ戻しながら言う竜之介。 「そういう事。ね、どう?行く気になった??」 よりいっそう行きたくなくなったぜ、と竜之介は心の中で呟いた。 続く
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