第3話


 2月に入って14日目の今日この日を、世間では『バレンタイン・デー』と銘打っている。
そして、当たり前の様に、友引大学のキャンパスではこの話で持ちきりだった

・・・・が、1人浮かない顔をした人物がいた。我らの主人公「藤波」の「竜之介」君である。

「はあ・・・。」
何やら深い溜め息をまといながらキャンパス内を歩く竜之介氏。どうやら前話でミニスカ達を失った
悲しみから未だ抜け出せていない様である。
世間は今『バレンタイン』で一色なのに、竜之介の頭の中には『バ・レ・ン・タ・イ・ン』の6文字は無く
『ミ・ニ・ス・カ』と『ブ・ウ・ツ』の7文字が絶え間無くリピートされていた・・・・・

「はあっ・・・・。」
引っ切り無しに溜め息を吐く竜之介。かなり、まいっている様子だ。そして、次の溜め息が吐かれるという瞬間
「竜之介さまーっ!!」
渚が猛スピードでタックルしてきた。
どーんっ・・・!!)
見事に竜之介を押え込んだ渚、見事に渚によって押え込まれた竜之介。2人は見事にサンドイッチになった。
「ゴホッ・・・、チョーク、チョークッ!!」
ラグビーでもないのにチョークを連呼する竜之介。
そして渚の体が自分から離れると、待ってましたっ!と言わんばかりに大声を張り上げた。
「てめえ、いきなり何しやがっ・・・・!?」
何しやがるっ!!と言おうとしたら「るっ!!」の所で何か口に突っ込まれた。
「・・・!?」
何か言ってやりたいが、口の中の何かが邪魔して言葉が喋れない様子である。
「美味しい?竜之介さま??愛情込めて作ったのよ。」
そう言いながら少し減った手作りチョコを誇らしげに見せる渚。どうやら、突っ込まれたのはそのチョコらしい。
(何だ、チョコレートかよ・・・チョコ!?)
さ〜っと、血の気が引いていく様な感覚にとらわれる竜之介。
「おい・・・、今日は何月何日だ?」
ゆらりと体を起こしながら問う竜之介。
「2月14日よ。」
何故か、満足げに言う渚。
「するってえ〜と、何だあ?まさか今日は『ばれんたいん・でえ』とかいう日かあぁ〜!?」
血の気が見事なほど完璧に引いた様な顔で再び問う竜之介。
「やだもー!竜之介さまったらーっ!!」
そう言って、恥ずかしそうに竜之介を突き飛ばす渚。バレンタインだからといって加減は無かった。
「忘れてたの〜?こんな大切な日を??まあ、良いわ。
とにかく、今日は恋する乙女の勝負の日、バレンタイン・デーよっ!!」
眼を乙女バシカの様にきらきらさせながら言う渚。
つられて、辺りにお花が散っている様な幻覚が見えそうである。気分はすっかり『恋する乙女』の様だ。
断っておくが、渚は立派(?)な男である。女みたいな男が、男みたいな女に
バレンタインのチョコをあげるという行為はおそらく日本中・・・
いや、世界中探しても友引大学、ここだけの珍事であろう。
渚の言葉を聞くと、竜之介はある事を思い出した。そしていきなり、
「・・・てめえっ!何てことしやがったっっ!!」
血相変えて怒鳴った。
「どうしたの?竜之介さま??」
ただチョコを突っ込んだだけなのに何怒ってんのよっ!という眼で言う渚。
「ど〜したも、こ〜したもねえっ!てめえ、知らねえのかっ!?
バレンタインの日にチョコ食うと男になっちまうんだぞっっ!!ど〜してくれんでえいっ!!!」
(父と娘の愛のバレンタイン!!参照)
真面目な顔して言う竜之介。どうやら、未だに浜茶屋のおやじの言った事を信じているらしい。
「・・・何言ってるの?竜之介さま??」
渚の反応はもっともである。
「あ〜、どうすりゃあいいんだああ〜。・・・そうだ!
確か、諸星の奴から『男にならずにすむ方法』を教わったんだっ!!」
その方法とは、友引高校の校舎の角で、相手に分からない様に待機し
最初に通りかかった男の子に「好きよ」と言って抱きつく。という摩訶不思議な方法である。
(父と娘のバレンタイン!!参照)
そして竜之介は渚の持っている残りのチョコを奪い、血相を又しても変えてさっさと走り去って行った。

目的地はそう・・・・、友引高校!!

 見事な走りであっという間に友引高校に到着した竜之介。
「さあ〜て、誰か通りかかるのを待つかあ〜・・・。」
独り言を言いながら待機する竜之介。
「何で誰も通らねえんだあ??待ってる間に男になっちまったらどうすりゃあ〜良いんだよ・・・・。」
1人で深刻に悩みだす竜之介・・・・とその時、『誰か』の足音が聞こえてきた。
 (ざっざっざっざっざっざっざっ!!)
「来たっ!!」
だんだんと足音は大きくなってくる。そして願いを込めながら竜之介は飛び出し、抱き付いた。

「好きだああ〜っ!!」

数秒間の沈黙。そして竜之介は腕を放し、その『誰か』を確認すると・・・
「東海林っ!?」
そう。その『誰か』は「東海林」の「祭」君、その人であった。
「な、な、何でおめえがここにっ!?」
「いやあ〜、一寸用事が有ってね。それより嬉しいなあ〜、藤波さんが僕の事を想っててくれてたなんて。
これでやっと僕等は幸せなカップルになれたんだね。感激っ!!」

可哀相なくらい勘違いしている東海林

「あのよお〜、そうじゃなくってよお〜・・・。」
言いにくそうに、今までのいきさつと『男にならずにすむ方法』の事を事細かに説明し始める竜之介。
「・・・・・・藤波さん、君は僕をからかっているのかい?」
一通りの説明を聞き終えて、東海林が最初に発した言葉がこれだった。
しかし、もっともな発言である。誰が『男にならずにすむ方法』を聞いてあっさりと
「ああ、そうなんですか。」と言えようか?

「からかってなんか、いねえってっ!!信じてくれよ〜、東海林っ!!!」
必死に訴える竜之介。
「・・・まあ、よく分かんないけど、分かったよ。じゃあさ、期限付きの僕の恋人になってよ!!」
何がどうなって、そうなると、こういう結論にたどり着くのであろう?
「・・・・?何言ってんだおめえ??」
思った事をそのまんま口にする竜之介。
「そうだなあ〜、期限は今年の夏終了までで。んで、見事この条件をのんでくれた暁には・・・
そ〜だなあ、なあ〜んでも好きな物プレゼント!ってのはどうかな?」
可愛い笑顔で言ってくれる東海林氏。
「その話、のったぜっ!!」
竜之介、迷わず即答。何を迷う必要が有る?という顔である。
こうして、2月の14日友引高校にて1組の期限・条件付きのカップルが誕生したのであった。


つづく



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